【パニック障害の克服】自分でできる認知行動療法3つのやり方と注意点
パニック障害

チョコレートがパニック障害の方に与える影響とは?~摂取時の注意点、治療法を詳しく解説

パニック障害 認知行動療法
公開日:2025.12.26

パニック障害があると、「チョコレートは食べないほうがいいの?」と不安になる方がおられるかもしれません。パニック発作につながるかもしれない刺激はできるだけ避けたい一方で、好きなものを完全に我慢する暮らしは、かえってストレスを高めてしまうこともあります。

この記事では、パニック障害の基礎知識から、チョコレートがパニック障害に与える影響、チョコレートとの上手な付き合い方までを、ガイドラインや研究知見をもとにわかりやすく解説します。​

石飛信

医師

石飛信

国立大学医学部を卒業後、母校の精神科医局に入局。臨床医、研究職を経て、現在は単科精神科病院で勤務。医療ライターとして医療系記事の執筆も行っている。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、子どものこころ専門医、医学博士。

パニック障害とは?

パニック障害は「突然、理由なく強い不安に襲われて、動悸、めまい、呼吸苦などのパニック発作を何度も繰り返すこと」を特徴とする疾患です[1]。

【パニック障害の克服】自分でできる認知行動療法3つのやり方と注意点

時に、死んでしまうのではないかという恐怖を覚えることもあります。多くの患者さんが、公共交通機関や混雑した場所など「逃げにくい状況」を避けようとする広場恐怖を併発し、社会生活に大きな支障をきたすこともあります。

パニック障害の原因

パニック障害には単一の明確な原因はなく、セロトニンやノルアドレナリン、GABAなどの神経伝達物質のアンバランス、脳の恐怖関連ネットワークの過敏性、遺伝的素因、ストレスフルなライフイベントなどが複合的に関与すると考えられています。

パニック障害の合併症

パニック障害では、うつ病、広場恐怖症、社交不安症、全般不安症、アルコール使用障害などの精神疾患を合併しやすいといわれています。

また、めまい、不整脈、甲状腺機能亢進症、過敏性腸症候群など、身体の不調や病気がみられることも多いです。 そのため、心身両面からアプローチした診断・治療をしていく必要があります。

食べ物や飲み物がパニック障害に影響する?

パニック障害に対する診療ガイドライン[1]では、食事や嗜好品は「発症原因」ではなく「症状を悪化させる条件(トリガー)として調整すべきもの」として位置づけられます。

カフェインやアルコールの取りすぎを控え、規則正しい睡眠・運動習慣、バランスのよい食生活を心がけることが、パニック障害の症状のコントロールや治療効果を高める生活介入として推奨されています。

カフェイン

カフェインは、コーヒー、紅茶、エナジードリンク、栄養ドリンク、緑茶・烏龍茶、チョコレートなどに含まれ、中枢神経を刺激する作用があるため、パニック障害のトリガーとして知られています。

例えば、高用量カフェインを短時間に摂取すると、パニック障害の患者さんにパニック発作が誘発されやすいことが過去の研究で示されています[2]。パニック障害の患者さんでは、過剰なカフェインで不安や動悸が生じて、パニック発作のトリガーになり得るため、カフェインを多く含む飲料や食べ物の過剰摂取をしないことが大切です。​

アルコール

アルコールには一時的に不安を和らげる作用もありますが、睡眠障害などを生じ、不安や発作リスクを高めることが知られており、パニック障害の生活指導では適度な飲酒にとどめることが推奨されています[3]。

チョコレートはパニック障害の人が食べても大丈夫?

チョコレートの成分がパニック障害へ与える影響とは?

チョコレートが、短期的にストレスや不安症状を軽減するという研究が報告されており、パニック障害の症状を軽減する可能性が示唆されています[4]。

一方で、チョコレートには、カカオ由来のカフェインとテオブロミンが含まれています。これらは中枢神経を刺激して、心拍数や血圧を変化させる可能性があります。

また、カフェインの過剰摂取により、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、下痢、吐き気などが出現します。そのため、エナジードリンクやコーヒーなどの摂り過ぎは、パニック障害の症状を増悪させる可能性があります。

カカオ分の高いダークチョコレート100 gには、数十mg程度のカフェインと200 mg前後のテオブロミンが含まれるとされ、単独ではコーヒー数杯分ほどではないものの、他のカフェイン源と合算するとカフェインの過剰摂取につながる場合があります。

チョコレートを摂取する際の注意点

チョコレートはパニック障害の人にとって「絶対に避けるべき食品」ではなく、以下のような姿勢で付き合っていくのがよいでしょう[5]。

カフェインの量を調整する

コーヒーなどから摂取するカフェイン量も含めて、1日400 mgを超えない範囲に抑え、就寝前3〜6時間はチョコレートやカフェイン飲料を避けるなど、睡眠と自律神経への影響を減らす工夫が大切です。

パニック障害の症状が不安定な時期は、一時的にカカオ成分の高いチョコレートの量や一緒に飲むコーヒーの量を減らすといった対応も一案です。

「楽しみ」を完全に奪わない

チョコレートの適量摂取が、ストレスや不安症状を軽減する可能性もあるため、好きなチョコレートをすべて断つ必要はなく、「日中に少量」「カカオの高いものを少し」など、症状悪化を招かない範囲で楽しむ折り合いをつけるのが現実的です。

そのうえで、パニック障害の標準治療(薬物療法・認知行動療法)を軸に、医師と相談しながらチョコレートを含む嗜好品との付き合い方を決めていくことが大切です

パニック障害の治療法

パニック障害の治療は、カフェインやアルコールなどの刺激物の取りすぎを控え、規則正しい睡眠・運動習慣、バランスのよい食生活を心がけたうえで、薬物療法と認知行動療法を行うことが中心になります。

薬物療法の中心は抗うつ薬や抗不安薬であり、パニック障害の要因の一つである脳内の神経伝達物質のバランスを整えます。認知行動療法はエビデンスレベルの高い治療法であり、「発作=危険ではない」と理解する心理教育や、自身の思考・行動パターンを見直す認知再構成を行い、実生活の中で不安な場面に慣れる段階的な曝露療法等を組み合わせます。

専門医の治療を受ける

パニック障害の的確な診断を受けるために、できるだけ早く専門医(精神科・心療内科)に相談しましょう。特に、日常生活や社会生活に著しい支障が出ている場合は、早急な受診が必要です。

出来るだけ早い回復に向けて、診断結果や治療方針を分かりやすく説明してくれる医師を見つけることが重要です。精神科専門医、精神保健指定医の資格の有無は、標準的な診断・治療ができるかどうかのひとつの判断材料となります。

薬物療法

薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬とされています[1]。SSRIは、パニック発作以外にも、予期不安や広場恐怖に対しても効果があり、継続して服用することにより症状の改善や再発予防が期待できます。

ただし、効果をはっきりと自覚できるまでに数週間かかることがあります。発作時や治療初期で症状が強く残っている時期には、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬が短期的に併用されることもあります。

認知行動療法

認知行動療法では、パニック発作や予期不安などに対する誤った認知と行動パターン(回避行動など)を修正し、過度の不安感や回避行動を少しずつ克服していきます。

認知行動療により、「発作が起きても大丈夫」、「発作=危険ではない」という新しい認知・行動パターンを身につけることで、不安に対する自己効力感が高まり、症状の軽減や再発予防が期待できます。薬物療法のみで改善しない場合には、認知行動療法の導入も検討しましょう。

当メディアを運営するマインドバディでは、オンラインで認知行動療法を専門としたカウンセリングを提供しています。薬物療法のみで改善せず、認知行動療法を受けてみたい方は詳細を確認してみてください。

まとめ

パニック障害は、適切な薬物療法と認知行動療法を軸にしながら、カフェインやアルコールの摂り過ぎを控え、睡眠・運動・食生活を整えることで、症状を軽減することができます。

チョコレートについても、「量とタイミングを整えれば、多くの場合“適度に楽しむことが可能な嗜好品”」と位置づけ、主治医と相談しながら自分に合った摂取量を探っていくことが大切です。​パニック障害の治療の中心は薬物療法・認知行動療法ですが、チョコレートを含む嗜好品との折り合いをつけながら、自分らしい生活を取り戻していきましょう。

参考文献
(1)パニック症診療ガイドライン(第1版)(2025):日本不安症学会・日本神経精神薬理学会
(2)Effects of caffeine on anxiety and panic attacks in patients with panic disorder: A systematic review and meta-analysis.General Hospital Psychiatry.Volume 74, 2022, Pages 22-31.
(3)Alcohol and Anxiety: Does Alcohol Cause Anxiety and Panic Attacks? American Addiction Centers.
(4)Effect of Flavanol-Rich Cacao Extract on the Profile of Mood State in Healthy Middle-Aged Japanese Women: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Pilot Study.Nutrients. 2023 Sep 3;15(17):3843.
(5) Routine general practice care for panic disorder within the lifestyle approach to managing panic study.Ment Illn. 2012 Sep 6;4(2):e18.