認知行動療法(CBT)は、うつ病や強迫性障害などの治療に用いられる心理療法です。しかし、治療を進める中でつらさを感じることも少なくありません。
この記事では、認知行動療法のつらさの原因と対処方法、そして他の治療法について解説します。
臨床心理士/公認心理師
甘中亜耶
京都文教大学大学院 臨床心理学研究科修了。大学院修了後、発達相談を経験した後、2022年から児童精神科クリニックと保健所に勤務。精神疾患やメンタルヘルスに関して「正しい情報を分かりやすく伝える」をモットーにフリーランスのライターとしても活動している。
そもそも認知行動療法って?
認知行動療法とはどのような心理療法なのか振り返ってみましょう。
どのような治療方法?
認知行動療法は、思考(認知)と行動に焦点を当て、それらを変えることで感情や症状の改善を目指す心理療法です。
カウンセラーとの対話を通じて、非合理的な思考のパターンや習慣を修正し、より適応的な考え方や行動を身につけます。
認知行動療法の効果とは?
認知行動療法は、うつ病、強迫性障害など、さまざまな精神疾患に効果があるとされています。
また、精神疾患以外でもストレスや悩みの改善に役立ち、症状の軽減や生活の質の向上、再発予防に役立つことが多くの研究で示されています。
認知行動療法でつらい気持ちが起きる原因とは
様々な精神疾患やストレスに効果がある認知行動療法ですが、実践しているとつらい気持ちになることがあります。大きく分けて4つの原因が考えられます。
②自分の嫌な部分や苦手な事に向き合うから
③どんな治療をするか分からず不安になるから
④家で行う課題が続かないから
原因①:思うように考え方、行動が変わらないから
認知行動療法では、思考や行動のパターンを変えることを目指します。私たちの考え方や行動は、長年の習慣や環境の影響を受けて形成されているため、なかなか変化するものではありません。
例えば、ネガティブな思考をポジティブに変えるには、多くの時間と努力が必要です。そのため、思うように考え方や行動が変わらないと感じて、焦りやイライラが募ることがあります。
原因②:自分の嫌な部分や苦手な事に向き合うから
認知行動療法では、自分の考え方や行動を見つめ直し、改善していく必要があります。この過程で、治療中に自分の弱点や苦手な部分に向き合うことは避けられません。
自分の嫌な部分や苦手なことに直面するのは、誰にとっても不快でつらい経験です。
例えば、自分の短所や過去の失敗、他人に対するネガティブな感情などに向き合うことは精神的に大きな負担となり、モチベーションが低下してしまいます。
原因③:どんな治療をするか分からず不安になるから
認知行動療法の具体的な内容がわからないまま始めると、不安やストレスが増大することがあります。
特に、治療のプロセスや目的がはっきりしないと、先が見えずに不安になるのは自然なことです。この不安が治療の効果を感じる前に、治療を中断してしまう原因にもなりかねません。
原因④:家で行う課題が続かないから
認知行動療法では、セッションの間に自宅で行う課題が出されることが多いですが、これを続けるのは簡単ではありません。とりわけ、セルフで行っていれば取り組み続けられないことがあります。
課題をこなす時間やエネルギーが不足したり、課題が難しかったり、効果が見えにくかったりすると、モチベーションが下がってしまいます。
さらに、課題が続かないことで、自己嫌悪や挫折感を感じることもあり、それが認知行動療法の進行を妨げることがあります。
認知行動療法を実施するメリット3選
ネガティブな気持ちを活性化することもある認知行動療法ですが、さまざまなメリットがあります。
②効果の持続期間が長く再発予防効果が高い
③副作用がほとんどない
メリット①:実践的で実生活に繋がりやすい
認知行動療法は、日常生活での具体的な困りごとを想定してカウンセリングを行っていきます。
現実的な問題解決に役立つため、実生活へ適用しやすいです。
メリット②:効果の持続期間が長く再発予防効果が高い
認知行動療法は、治療が終わった後も効果が持続しやすいです。さらに、治療で学んだスキルを活用することで、将来的な症状の再発を防げます。
メリット③:副作用がほとんどない
薬物療法とは異なり、認知行動療法には身体的な副作用がほとんどありません。安心して治療を続けられます。
認知行動療法を実施するデメリット3選
認知行動療法のデメリットも確認しておきましょう。
②コストがかかる
③状態によっては受けられない
デメリット①:即効性がない
認知行動療法は、認知や行動といった内面の変化を目指すため即効性は期待できません。時間をかけて取り組む必要があります。
デメリット②:コストがかかる
専門のカウンセラーによる心理療法は、保険適用外の場合が多いです。
そのため、経済的負担が大きくなることがあります。費用相場は、5,000~15,000円と言われています。
デメリット③:状態によっては受けられない
重度の精神疾患や緊急性の高い症状がある場合、認知行動療法が適さないことがあります。適切な治療法の選択が重要です。
認知行動療法がつらい時の対処法5選
認知行動療法の治療がつらいと感じた時にはどのような対処方法があるのでしょうか。
②改善した自分を想像する
③気分転換の時間を作る
④目標を調整する
⑤セルフではなく専門家と一緒に実践する
対処法①:医師やカウンセラーに相談する
治療中に感じるつらさや不安は、医師やカウンセラーに相談しましょう。
「言っていいのかな…」「失礼かもしれない」と悩まれるかもしれませんが、伝えても大丈夫です。
専門家であれば、認知行動療法がつらい気持ちを活性化させることがあると知っているからです。
自分の気持ちを伝え、心理療法のペースや内容について調整しましょう。
専門家と「何故つらいのか」を考えることで、自分の認知の癖を知るきっかけになることがあります。
対処法②:改善した自分を想像する
治療の最終目標を明確にし改善した自分を想像することでモチベーション維持に繋がります。ポジティブな未来を描くことで、つらさを乗り越える力になります。
対処法③:気分転換の時間を作る
治療に集中しすぎるとかえってストレスがかかることがあります。
認知行動療法を行っている期間も適度な気分転換を取り入れることが大切です。趣味やリラクゼーションを通じて、ストレスを軽減しましょう。
対処法④:目標を調整する
大きな目標を設定すると、達成が難しく感じられることがあります。
小さな目標に分けて、段階的に達成感を得ることで、モチベーションを保てます。
対処法⑤:セルフではなく専門家と一緒に実践する
認知行動療法を自己流で行うと効果が出にくい場合があります。専門家と一緒に取り組むことで、効果的な方法を学び、つらさを軽減できます。
マインドバディは、認知行動療法を効果的に実践するための支援ツールです。専門家の指導のもとで、自宅でも取り組めます。
認知行動療法がつらい時に試したい他の治療方法3選
認知行動療法の他に問題解決に繋がる方法を紹介します。
治療方法①:休息
十分な休息を取ることで、心身の疲れを癒やし、ストレスを軽減できます。睡眠やリラクゼーションを大切にしましょう。
治療方法②:薬物療法
必要に応じて、医師の指導のもと薬物療法を併用することがあります。
薬物療法は、症状の軽減や安定化に役立ちます。心理療法に比べ、即効性があることも特徴です。
治療方法③:認知行動療法以外の心理療法
他の心理療法(例えば、精神分析や来談者中心療法)を試すことも一つの選択肢です。
自分に合った治療法を見つけることが大切です。
つらい気持ちをうまく乗り越えて認知行動療法の効果を得よう
認知行動療法はつらさを感じることがあっても、その先に大きな効果をもたらす治療法です。つらい時期を乗り越えるために、原因や対処法を知り、自分に合った方法で取り組みましょう。
オンラインサービス「マインドバディ」であれば、国家資格を持った経験豊富なカウンセラーから認知行動療法を受けられます。
つらい気持ちで悩んだり不安になったりする人は、検討してみてはいかがでしょうか。