パニック障害

パニック障害に頓服薬は有効?治療薬の種類と効果がない時の対処法について詳しく解説

パニック障害
公開日:2025.11.26

パニック障害は、突然強い不安や動悸、息苦しさに襲われる「パニック発作」が繰り返し起こる病気です。発作の恐怖から外出を避けるようになったり、「また起きたらどうしよう」と不安を抱えたりする方も少なくありません。

そのような時に頼りになるのが「頓服薬(とんぷくやく)」です。急な発作時に一時的に不安や動揺を和らげる目的で使われますが、「どんな薬を使うの?」「依存が心配…」「効かない時はどうしたらいい?」と悩む方も多いでしょう。

この記事では、パニック障害における頓服薬の役割や使用上の注意点、治療薬の種類、そして薬が効かない場合の対処法について、わかりやすく解説します。

石飛信

医師

石飛信

国立大学医学部を卒業後、母校の精神科医局に入局。臨床医、研究職を経て、現在は単科精神科病院で勤務。医療ライターとして医療系記事の執筆も行っている。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、子どものこころ専門医、医学博士。

パニック障害とは?

パニック障害は、突然生じる強い不安、動悸、めまい、呼吸苦などを特徴とするパニック発作が繰り返し出現し、「次も発作が起きるのでは」という予期不安と、発作を回避しようとする回避行動が特徴の精神疾患です[1]

患者さんは「このまま死んでしまうのでは」といった強い恐怖を感じることもあり、日常生活や社会活動に大きな影響を与えることも少なくありません。

パニック障害の発症メカニズム

パニック障害の発症には、生物学的要因(脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の異常)、心理社会的ストレス、遺伝的素因などが複合的に関与しています。不安や恐怖を制御する扁桃体の過活動も発症メカニズムの一つと考えられています。

パニック障害の症状

主な症状は、突発的な動悸、発汗、息苦しさ、めまい、胸痛、手足の震えなどのパニック発作です。

発作が繰り返されることで、「また発作が起きるのでは」という予期不安や、特定の場所や状況を避ける回避行動が生じ、日常生活が制限されることもあります。また、うつ病やその他の不安障害を併発する場合もあります。

パニック障害の治療法

パニック障害の治療は、薬物療法と認知行動療法などの心理療法が中心です。薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択薬とされています[2]

SSRIは、パニック発作以外にも、予期不安や広場恐怖に対しても効果があり、継続して服用することにより症状の改善や再発予防が期待できます。ただし、効果をはっきりと自覚できるまでに数週間かかることがあります。発作時や治療初期で症状が強く残っている時期には、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬が短期的に併用されることもあります。

認知行動療法では、パニック発作や予期不安などに対する誤った認知と行動パターン(回避行動など)を修正し、過度の不安感や回避行動を少しずつ克服していきます。

パニック障害の治療で頓服薬が必要な場合は?

頓服薬とは「必要な時だけ服用する薬」を意味します。パニック障害では、急な発作時に即効性を期待してベンゾジアゼピン系抗不安薬を頓服薬として処方することがあります。

症状が軽度で発作頻度が低い場合や、抗うつ薬による維持療法が安定するまでの「つなぎ」として用いられることもあります。ただし、ベンゾジアゼピン系抗不安薬への依存や離脱症状のリスクを考慮し、安易に長期間にわたって使用することは控えるべきとされています。

パニック障害で使用される頓服薬の種類

主にベンゾジアゼピン系抗不安薬(アルプラゾラム、ロラゼパム、ジアゼパムなど)が用いられます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、脳内のGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の働きを強めることで、不安や緊張を和らげる作用があります。長期的に多用すると、耐性(薬が効きにくくなる)や依存を生じるため、発作時のみの最小限使用が推奨されます。

頓服薬が効かない場合の対処法

頓服薬が発作時に十分な効果を示さない場合は、以下の対応が望ましいでしょう。

主治医に相談する

治療の段階にもよりますが、処方された頓服薬が必ずしも発作時に奏功するとは限りません。治療方針に少しでも疑問や不安を感じる場合は必ず主治医に相談しましょう。

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頓服薬を含めた内服薬の変更、適切な減薬・中止のタイミング、認知行動療法の導入など、状態に応じた提案を受けることができます。自己判断で治療中断したり、服薬方法を変更したりすることは避けましょう。

認知行動療法に取り組む

認知行動療により、「発作が起きても大丈夫」、「発作=危険ではない」という新しい認知・行動パターンを身につけることで、不安に対する自己効力感が高まり、症状の大幅な軽減や再発予防に役立ちます。薬物療法のみで改善しない場合や、頓服薬中心の対処に限界がある場合には、認知行動療法の導入も検討しましょう。

当メディアを運営するマインドバディでは、オンラインで認知行動療法を専門としたカウンセリングを提供しています。薬物療法のみで改善しない方や頓服薬中心の対処に限界がある方は詳細を確認してみてください。

規則正しい生活を送る

パニック障害の悪化や再発を防ぐには、生活リズムの安定、十分な睡眠、適度な運動、ストレスマネジメントが不可欠です。

カフェインやアルコールの過剰摂取を控え、バランスの良い食事を心がけることも発作予防や不安コントロールに効果的です。

まとめ

パニック障害の頓服薬は、急なパニック発作時の強い不安を一時的に和らげる重要な選択肢ですが、頓服薬はあくまで「安心の補助」として位置づけ、主治医と相談しながら適切に使うことが大切です。薬物療法だけではなく、認知行動療法などの心理的アプローチや生活習慣の見直しもあわせて取り入れることで、より確かな回復につながります。

焦らず、自分のペースで治療を続けていくことが回復への近道です。もし頓服薬の効果に不安を感じた場合や、治療方針に迷いがある場合は、ためらわず医師に相談しましょう。専門的なサポートを受けることで、安心して日常生活を取り戻すことができるでしょう。

参考文献
(1)パニック症診療ガイドライン(第1版)(2025):日本不安症学会・日本神経精神薬理学会
(2)パニック症はどこまで薬物療法で治せるのか : その限界と多角的治療の現状,そして可能性.精神神経学雑誌 120 (3), 195-204, 2018