認知行動療法がつらい理由と対処方法5選【疲れる、イライラを解消】
うつ病

40代のうつ病治療。医師と一緒に考えるうつ病治療の取り組み方

うつ病
公開日:2025.07.25

「最近、朝起きるのがつらい」「仕事に集中できない」「家族といても楽しくない」――そんな状態が続いていませんか?こうした不調は、もしかしたらうつ病のサインかもしれません。

40代は職場や家庭で大きな責任を背負う時期であり、心身の負担が重なり、うつ病を発症しやすい年代といえます。40代のうつ病の特徴について正しく理解し、適切な治療につなげることが大切です。この記事では、40代のうつ病の特徴や治療の考え方について一般の方にも分かりやすく解説します。

石飛信

医師

石飛信

国立大学医学部を卒業後、母校の精神科医局に入局。臨床医、研究職を経て、現在は単科精神科病院で勤務。医療ライターとして医療系記事の執筆も行っている。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、子どものこころ専門医、医学博士。

40代のうつ病、まず知っておきたいこと

「これってうつ病?」受診を考える目安

うつ病は、抑うつ気分(気持ちの落ち込み)や意欲・興味の低下が長期間続き、日常生活や社会生活に大きな支障をきたす病気です[1]。基本的な診断基準は全年齢で共通であり、40代特有の診断基準があるわけではありません。「好きだった趣味に全く興味が湧かない」、「朝の支度がおっくうで異常に時間がかかる」、「同僚との雑談が苦痛に感じる」など人によって感じる症状はさまざまです。

こうした、うつ病が疑われる症状が2週間以上続き、十分な休養を取っても改善しない場合は、できるだけ早く専門医(精神科・心療内科)に相談しましょう。

40代がうつ病になりやすい理由

40代は「働き盛り」の世代であり、仕事や家庭で多くの責任を担う年代です。この時期にうつ病を発症する人が増えている背景には、さまざまな要因が考えられます。ここでは、40代でうつ病を発症しやすい主な原因について解説します。

1.職場でのストレスと責任の増大

40代は管理職へ昇進する時期でもあり、仕事上の責任が急激に増大し、慢性的なストレスを抱えやすくなります。職場でのストレスが慢性化すると、徐々に心身の不調をきたし、うつ病の発症リスクを高める可能性があります。

2.家庭での負担の増加

40代は家庭生活での大きな変化や課題に直面する時期です。両親の高齢化による介護問題、子どもの進学に伴う教育費の増加など、様々な責任や負担が重なることで、強い精神的ストレスが慢性化しやすい時期です。このような家庭生活で受けるストレスは、うつ病の発症リスクを高める可能性があります。

3.身体的な変化

40代になると加齢による体力の衰えや、慢性的な疲労感、睡眠の質の低下を自覚しやすくなります。さらに、男女問わずホルモンバランスの変化が心身に影響を及ぼします。こうした身体的な変化が、うつ病の発症やうつ症状の悪化につながることがあります。

こうした複数の要因が重なり、40代は特にうつ病のリスクが高いとされています。

40代のうつ病の特徴と従来治療の限界

40代のうつ病の特徴は?

40代のうつ病においても、基本的な症状は他の年代と違いはありませんが、年齢による症状の現れ方に一定の傾向が報告されています。40代では、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失などの気分症状に加え、身体的症状(例:睡眠障害、食欲低下、性欲減退)がやや目立ちやすくなる傾向があります[2]

薬物療法だけでは不十分な理由

現代のうつ病治療は、休養・薬物療法・精神療法が3本柱であり、必要に応じてお薬の助けを借りてすすめていくことがスタンダードとなっています。一方で、40代にみられるうつ病では、先に述べた職場や家庭でのストレスや加齢による身体的変化の影響が大きいため、回復に向けてはこれらの要因への対応をより意識する必要があります。

このため、薬物療法と並行して、ストレス要因に対する環境調整や心理療法、生活習慣の改善も合わせて行うことが重要です。

薬と組み合わせて効果的な5つの方法

1. 考え方のクセを変える練習(認知行動療法)

認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)は、うつ病の治療において世界的に広く用いられている心理療法の一つです[3]。CBTでは、悲観的・否定的な考え方や行動パターンがうつ症状を悪化させている点に注目します。CBTにより、自分自身の思考や行動パターンに気づき、少しずつ考え方を変えていくことで、気分の安定や再発予防に役立ちます。

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2. 体を動かす習慣を作る

運動療法は、軽度から中等度のうつ病の非薬物治療として注目されています。中でも、ウォーキング、ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングなどが特に有効であることが最近の研究でも示されています[4]

負荷の少ない「ながら運動」から始めてみるのもよいでしょう。運動アプリで歩数や運動時間を記録することで達成感を得やすくし、「昨日より100歩多く歩けた」など小さな進歩を実感できるようにするのもよいでしょう。

3. 一人で抱え込まずに相談する

うつ状態にある時は、どうしても視野が狭くなりがちです。悩みや不安を話せる相手がいるだけでも気持ちが安らぎ、心の負担を減らすことができるでしょう。例えば、家族と夕食後や寝る前に、お互いの一日について短時間でも話す機会を作り、一人で抱え込む状況を避けるのもおすすめです。また、職場の気の合う同僚や友人と定期的に悩みを共有しあうのもよいかもしれません。

4.睡眠覚醒のリズムを整える

うつ病の治療では、睡眠と覚醒のリズム(サーカディアンリズム)を整えることが非常に重要です。乱れたサーカディアンリズムはうつ病発症のリスクになるだけでなく、うつ症状の改善を妨げる要因にもなるからです。下記に、睡眠覚醒リズムを整えるために実践できる具体的な方法を解説します[5]

・毎日同じ時間に起床・就寝する

起床時刻を一定に保ちましょう。休日も含めて毎日なるべく同じ時間に起きることで、体内時計が安定します。

・朝の光を浴びる

朝起きたらすぐにカーテンを開けて日光を浴びましょう。太陽光により体内時計をリセットすることができます。曇りの日や冬など、日照時間が少ない場合は、明るい照明(2,500ルクス以上)を朝に浴びることで代用できます。

・昼寝は短めに

長時間の昼寝や夕方以降の仮眠は、夜の睡眠に悪影響を及ぼしますので、昼寝は15~30分以内にとどめましょう。

あなたに合った方法の見つけ方

「うつ病かもしれない」と思った時は、症状の重症度を自己判断することは危険です。まずは専門医に相談し、客観的に評価してもらうことが大事です。そのうえで、希望する治療方針を遠慮なく医師に伝え、どんな治療法が自分に適しているのかを医師に判断してもらうことが大切です。

症状の重さで考える優先順位

うつ病は、症状の強さや日常生活に現れる支障の程度によって、「軽症」、「中等症」、「重症」に分類されます[6]。いずれにおいても可能な限り休養をとること、ストレス因を少しでも減らす工夫をすることが大事です。

軽症うつ病

うつ症状のために、仕事や日常生活に弊害が生じている自覚はあるものの、日常生活や仕事はなんとかこなせます。このため、周囲からは気づかれにくいことも多いです。睡眠障害や意欲低下、抑うつ気分が主な症状であり、本人は「なんとなく調子が悪い」と感じる程度で、深刻に捉えていないこともあります。

専門医を受診の上、投薬まで必要ないと判断された場合は、まずは可能な範囲で運動療法や睡眠習慣の改善、認知行動療法(CBT)などに取り組みましょう。

中等症うつ病

うつ症状が軽症うつ病よりも強くなり、仕事や学業、日常生活に大きな支障がでます。外出や人付き合いを避けるようになったり、仕事上のパフォーマンスも低下したりするため、周囲からも変化が認識されやすくなります。

多くの場合、薬物療法が必要となります。医師と相談の上、薬物療法と並行して取り組める運動療法、認知行動療法(CBT)などに取り組むのもよいでしょう。

重症うつ病

仕事や日常生活、他者とのコミュニケーションが明らかに困難になるほどうつ症状が重い状態です。強い自責感や無価値感、希死念慮(死にたい気持ち)が現れることもあります。食事や着替えなど身の回りのこともできなくなることが多いです。家族が受診を勧めても拒否する場合もあり、精神科での入院治療が必要となる場合もあります。

実践の継続性を高めるコツ

完璧を目指さずに小さな目標を設定し、スモールステップで出来ることを増やしていくことが大切です。また、記録をつけて「見える化」することで達成感を得られ、自己肯定感も高めることが出来るでしょう。

何かに取り組むことを決めても、ある程度の時間の確保も必要になってきます。家族にも回復に向けた取り組みであることをはっきりと伝え、協力を得られるようにするのもよいでしょう。

今日からできる最初の一歩

まずは医療機関を探してみる

医療機関は治療のパートナーとなる大切な存在です。話をよく聞いてくれる、質問に丁寧に答えてくれる、治療方針を分かりやすく説明してくれるなど、信頼できる医師を見つけることが重要です。精神科専門医、精神保健指定医の資格の有無は、標準的な治療ができるかどうかのひとつの判断材料となりますので、ホームページで確認することをお勧めします。

今夜から試せること

1.家族や友人に今感じてる不安を素直に伝えてみる

悩みや不安を話せる相手がいるだけでも気持ちが安らぎ、心の負担を減らすことができるでしょう。思い切って家族や友人に今感じている症状や不安なことを伝えてみましょう。

2.睡眠の妨げになる習慣をひとつやめてみる

夜間に明るい光を浴びると寝付きが悪くなります。スマホを寝室に持ち込まない、夜間はなるべくリラックスできる薄暗い部屋で過ごすなどの行動を心がけましょう。

一人で抱え込まないために

・家族、友人、同僚の中から「この人になら話せる」と思える人を一人決め、自身の感じている不調を思うがままに伝えてみましょう。うまく話すことにこだわる必要はありません。

・保健所や精神保健福祉センターなどでは、 治療や生活に関する様々な相談ができます。ご本人だけでなく、ご家族からの相談も受け付けています。どこに相談していいか分からない時の最初の窓口として活用できますので、お住いの地域にある相談機関を調べてみましょう。

・医療機関での治療と並行して、メンタルヘルスの専門知識を持つカウンセラーやコーチからのサポートを受けることで、より包括的なケアが可能になります。私たちマインドバディでも、うつ病と向き合う方々への専門的なサポートを提供しており、医師の治療と連携しながら日常生活での実践的なアドバイスをお手伝いしています。

まとめ

うつ病は誰にでも起こりうる身近な病気です。特に40代は、仕事や家庭で多くの役割を担い、心身の負担が重なりやすい年代です。

もし「自分も当てはまるかもしれない」と感じたら、一人で抱え込まず、まずは信頼できる医療機関や身近な人に相談してみてください。小さな一歩が、回復への大きな第一歩になります。あなた自身の心と体を大切にしながら、医師や周囲と一緒に、あなたに合った治療や取り組み方を見つけていきましょう。

参考文献
(1)うつ病とは – 原因、症状、治療方法などの解説 | すまいるナビゲーター | 大塚製薬
(2)Age-Related Variability in the Presentation of Symptoms of Major Depressive Disorder. Schaakxs R, Comijs HC, Lamers F, Beekman AT, Penninx BW. Psychological Medicine. 2017;47(3):543-552.
(3)認知行動療法(CBT)とは|認知行動療法センター(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
(4)Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials.BMJ. 2024 Feb 14:384:e075847. doi: 10.1136/bmj-2023-075847.
(5)睡眠障害対処 12の指針|スイミン資料室|不眠・眠りの情報サイト スイミンネット
(6)うつ病とは:ご存知ですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト