心療内科では、診察以外に臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングが受けられる場所もあります。
しかし、「状況が変わるわけがない」「話しても意味ない」と考える人も一定数いるでしょう。
今回は、心療内科のカウンセリングが意味ないといわれる理由や、受診すべき症状を心の専門家である臨床心理士が詳しく解説します。
相談できる悩みの例も紹介しますので、参考にしてみてください。
臨床心理士/公認心理師
いけや さき
心理職として精神科病院や心療内科クリニック、児童発達支援事業所での勤務を経て、現在はフリーのカウンセラー、児童精神科の心理士として活動中。またマインドバディ株式会社をはじめとする複数の会社とライター契約し、心理学やメンタルヘルス、ライフスタイルに関するライター活動も行っている。
心療内科のカウンセリングが意味ないといわれる3つの理由
カウンセリングが意味ないといわれる理由は以下の3つにあると考えられます。
②症状が悪化することがある
③アドバイスがもらえるわけではない
1つずつ詳しく解説します。
理由①:カウンセリング料金が高い
医師の診察と異なり、カウンセリングは保険適用外であることが多く、1回1万円以上の心療内科もあります。
患者さん側からすれば、診察とカウンセリングの違いがわかりにくいことも、料金が高いと感じる理由の1つ。
料金に違いがあれば、できるだけ安い方がいい、高い料金を払うのは意味がないと考えるのは無理ありません。
理由②:症状が悪化することがある
心療内科のカウンセリングは、基本的に医師の許可がないと受けられません。
理由は、カウンセリングが受けられるような精神状態ではない場合や、受けることで症状が悪化する可能性もあるからです。
薬に副作用があるように、カウンセリングも万能なものではなく、精神状態によっては調子が悪くなることもあります。
理由③:アドバイスがもらえるわけではない
3つ目の理由は、カウンセリングを一度受けたことのある方からもよく聞く意見です。
カウンセラーは一般的にアドバイスは行いません。カウンセリングとは、自分で解決の糸口を見つけ、ストレス対処していくための力を手に入れるためのサポート的役割を担っているからです。
ただし必要に応じて、専門家としての見解や見立てを伝えることや、提案や助言をすることはあります。
心療内科のカウンセリングが必要な人の症状3選
意味ないといわれるカウンセリングですが、実際には必要な人にとっては意味があるものです。
カウンセリングは医療機関以外でも受けられますが、心療内科で受けるべき人もいます。心療内科のカウンセリングが必要な人の特徴3つを、以下にまとめました。
②身体症状がある
③希死念慮がある
1つずつ詳しく解説します。
必要な人①:精神症状がある
ストレスが溜まり、メンタル不調を感じていてもそのままにする方は非常に多いです。
そのままにするのは、「この程度のことで診察を受けるなんて」「もっとつらい人はいる」などの思いがあるのではないでしょうか。
しかし、症状が悪化してからの回復には非常に時間がかかります。
以下の症状が2週間以上続いている人は、早めに心療内科を受診しましょう。
・好きだったことを楽しめなくなった
・やる気が起きない
・ネガティブな考えが止まらない
・不安になって落ち着かない
・人に会いたくない
・集中できない、覚えられない
・突然涙が出てくる
なかでも、ネガティブ感情や不安が強い人はカウンセリングを希望されることで、薬との相乗効果も期待できます。
必要な人②:身体症状がある
身体症状があると、内科を受診される方が多いですよね。しかし、原因が見つからず心療内科や精神科を紹介された人もいるのではないでしょうか。
心療内科へ受診すべき身体症状の目安は、次の通りです。
・頭痛や関節痛
・不眠(入眠困難や中途覚醒など)
・食欲不振、もしくは食欲増進
ほかにも、以前より疲れやすい、性欲がわかない、食事がおいしく感じないなども身体症状の1つ。
症状があっても、精神症状が全くない人は、内科や不調部分の専門外来への受診も検討してみてください。
カウンセリングとは結び付かないかもしれませんが、考え方や受け取り方を柔軟にすることで、身体症状が緩和することもあります。
必要な人③:希死念慮がある
内科でも、心療内科や精神科の薬を処方されることがあります。
しかし、次のような気持ちや行為がある人は内科で処方される薬だけでは、回復しにくいかもしれません。
・希死念慮
消えたい、楽になりたい、死にたいという気持ちになること。
自殺念慮もほぼ同義です。
・自殺企図
自ら命を絶つことを、計画して実行する行為のこと。
企てる(計画し実行する)という言葉から自殺企図とつけられています。
自殺企図は、自殺未遂とほぼ同義で扱われますが、実行する行為なので自殺既遂も含まれます。
カウンセリングが受けられる心療内科の探し方
カウンセリングを受けられる心療内科は、「病院なび」などの検索サイトで探せます。しかし、すべてのクリニックの最新情報が掲載されているとは限りません。
候補を見つけた場合は、医療機関の公式サイトを必ず確認しましょう。
そのほかにも、「○○市 メンタルクリニック カウンセリング」で検索すると近隣の心療内科を探せます。少々地道な作業となりますが、自分に合うクリニックを探してみてくださいね。
心療内科のカウンセリングで相談できる悩みの例6選
心療内科の診察とカウンセリングは異なり、カウンセリングでは次の6つの相談ができます。
②自分の性格
③トラウマ
④仕事
⑤睡眠
⑥食欲
⑤と⑥は診察でも相談できますが、診察は処方のための問診となるため、具体的な相談はカウンセリングの方がおすすめです。
悩みの例①:人間関係
カウンセリングでよく相談対象となる人間関係には、次のようなものがあります。
・友人や知人
・パートナー、恋愛
・職場(上司、同期、部下など)
私たちの悩みの原因は、9割が人間関係といわれるほど、ストレスやメンタルヘルスと関連しています。
悩みの例②:自分の性格
「自分の性格を変えたい」「ネガティブ思考を治したい」と思っている人は、多いのではないでしょうか。
また、自分の性格を責めてしまうけど、改善方法がわからない人もいます。わからなくて不安なままだと、自分を責めてしまってつらいですよね。
カウンセリングでは、今の性格を否定する形で治すことはしません。根本的に性格を変えるというよりも、物事の考え方や捉え方を修正して、過ごしやすくなることを目指します。
悩みの例③:トラウマ
トラウマとは、ショックな出来事や苦痛によって、時間が経過しても心が傷ついていることです。
災害や事故、大事な人の死、性被害に限らず、次の出来事でもトラウマとなりやすくなります。
・虐待
・ハラスメント
・DV
・毒親に育てられた
トラウマは複雑化しているものもあり、身体にも影響が出やすいです。カウンセリングでは認知行動療法のなかでも、エクスポージャー療法などを行うことがあります。
悩みの例④:仕事
カウンセリングは、仕事や転職活動などにおける自己分析にも役立ちます。
仕事の相談は、次のような悩みが多いです。
・セクハラやモラハラに悩んでいる
・上司によく注意される
・業務量が多い
・残業ばかりになる
・仕事に行こうとすると動悸がする
・集中できなくなった
・転職したいけど、自信がない
・転職活動がうまくいかない
仕事の悩みは、人間関係に関することから、キャリアプランや自己分析など、さまざまな要因が絡み合っていることが多いといわれています。
悩みの例⑤:睡眠
睡眠は身体症状ですが、ストレスや不安などが原因で眠れていないこともあります。
薬物療法と並行で治療していく方法を、以下にまとめました。
・睡眠モニタリング法
・睡眠スケジュール法
・問題解決技法
・リラクゼーション法
上記のような認知行動療法を用いて、睡眠の質の改善を目指します。
悩みの例⑥:食欲
食欲も身体症状ですが、睡眠不足やストレス、ホルモンバランスの影響を大きく受けていると考えられます。
摂食障害に限らず、食欲低下やダイエット願望があっても食べてしまう方などの相談も対象です。
食欲に関するカウンセリングの技法を、以下にまとめました。
・動機づけ面接
・精神分析的心理療法
特に、本人が食欲をコントロールする意思がない場合に動機づけ面接が行われます。
心療内科のカウンセリングについてよくある3つの質問
最後に、心療内科のカウンセリングについてよくある3つの質問の回答を紹介します。
②精神科と心療内科でカウンセリング内容は違う?
③カウンセリングが意味ない人はいるの?
1つずつ詳しく解説します。
質問①:心療内科でカウンセリングだけ受けられる?
カウンセリングだけ受けられる医療機関もあります。
しかし、多くの病院やクリニックは、診察を受けている方のみを対象としているようです。
質問②:精神科と心療内科でカウンセリング内容は違う?
内容に違いはありません。
診療科で違いがあるというよりは、担当するカウンセラーの得意な心理療法や、患者さんに合わせてカウンセリング方法が変わることはあります。
質問③:カウンセリングが意味ない人はいるの?
結果的に意味がない状態になる人はいます。
たとえば、次の特徴がある方はカウンセリングが意味ないと感じやすいです。
・自分と向き合いたくない
・カウンセラーにお任せしたい
・知識や方法だけ知りたい
別の記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
関連記事:【心理師解説】カウンセリングが意味ない人の特徴8選【効果を得る方法も紹介】 | マインドバディ|認知行動療法のサブスク
近隣に心療内科がなければオンラインカウンセリングもおすすめ
心療内科のカウンセリングは、ハードルが高く感じるかもしれませんが、受ける意味はあります。
特に、精神症状と身体症状を併せ持つ方や、希死念慮のある方は心療内科のカウンセリングがおすすめです。
相談できる内容も、自分自身の性格や人間関係から、仕事や睡眠のことなどさまざまなことに対応しています。
しかし、お近くに心療内科がない人や、カウンセリングが受けられるクリニックではない人もいますよね。
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