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【公認心理師解説】強迫性障害の症状と認知行動療法による治療法を紹介

強迫性障害 認知行動療法
更新日:2024/06/21

【公認心理師解説】強迫性障害の症状と認知行動療法による治療法を紹介

近年、自分が強迫性障害であることを告白する芸能人が増えており、どのような障害であるのか、症状や行動、治療についての情報に注目が集まっています。

今回は、強迫性障害の人は日常的にどのような行動や精神状態に悩まされているのか、また、どのような治療法が行われているのかについてまとめていきます。

強迫性障害とは

強迫性障害は、自分の意思とは無関係にさまざまな考えが勝手に頭に浮かんだり、同じ行動を何度も繰り返さずにはいられなかったりして、日常生活に支障が出てしまう障害です。

勝手に浮かんで頭から離れない不合理な考えのことを【強迫観念】、同じ行動を何度も繰り返すことを【強迫行為】と呼び、不安障害の1つとして位置づけられています。

強迫性障害の症状

強迫性障害の主な症状は以下の通りです。

【強迫観念】
「内容がおかしい」「場面にそぐわない」と分かっていても、頭から追い払えない考えが浮かぶ。

【強迫行為】
強迫観念から強い不安が発生し、払拭のため何度も同じ行動を繰り返してしまう。

強迫観念の種類

よく起こりやすい強迫観念には、下記のような種類が挙げられます。

種類1:病気への不安 (疾病恐怖)
種類2:汚染に対する不安 (不潔恐怖)
種類3:あいまいさに対する不安 (不完全恐怖)
種類4:ミスや失敗に対する不安 (確認恐怖)
種類5:被害や加害に対する不安 (危険恐怖)

強迫性障害の診断

強迫性障害は、アメリカ精神医学会のDSM-5やWHOのICD-11などの基準に基づいて診断されます。主に以下の3つの基準で、医師が診断します。

・強迫観念か強迫行為のどちらかが存在する、もしくはその両方が存在する。
・強迫観念か強迫行為によって、1日1時間以上時間の浪費がある、もしくは精神的苦痛や社会的な問題が発生している。
・他の精神疾患(例えばうつ病や統合失調症など)では説明できない。

※参照:強迫症
(OCD) – 08. 精神障害 – MSDマニュアル プロフェッショナル版 (msdmanuals.com)

診断に関しては、自分で勝手に判断するのではなく、まずは医師の診察を受けることが大切です。

強迫性障害の原因

強迫性障害の原因には複数の要因が関連しています。

原因となる主な要因は以下の3つです。

要因1:元々の性格

強迫性障害になりやすい性格傾向があると言われており、几帳面・神経質・こだわりの強さ等との関係が深い。

要因2:遺伝

遺伝的な影響も指摘されており、特に幼い頃に発症する場合は、遺伝の影響が大きい。

要因3:ストレス

生活環境からのストレスが重なると発症しやすくなり、家庭・学校・仕事環境などに明らかなストレスがあるとリスクが高まる。

現在は、脳科学的な視点からも原因が分析されています。神経伝達物質の1つであるセロトニンの調節障害や、ドパミンなど他の神経伝達物質の関与が指摘されているそうです。

単純な性格の問題ではなく、元々脳の機能的な問題があるところに、ストレスなどの影響が加わって発症する、という理解が一般的になりつつあるようですね。

強迫性障害の治療法

強迫性障害の治療は、薬物療法と心理療法を組み合わせて行われることが一般的です。

心理療法では、認知行動療法が第一に選択されますが、症状が非常に強く出ている時は、まず薬物療法が優先であることも覚えておきましょう。

強迫性障害の治療に有効な認知行動療法2選

ここからは、強迫性障害に対する認知行動療法としてよく使われる2つの技法を解説します。

認知行動療法の技法1:「曝露反応妨害法」

強迫性障害に対する認知行動療法では、「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」という技法が特に効果的とされています。

曝露反応妨害法には、【曝露】と【反応妨害】の2つの要素が含まれています。

【曝露】とは

まず【曝露】では、その言葉の通り、不安を感じる状況や物事に晒されてもらいます。

例)不潔恐怖で常に手を洗う強迫行為がある人に対し、あえて手が汚れる泥を触ってもらう行動をとってもらう。

【反応妨害】とは

続いての【反応妨害】では、思わず出てしまう強迫行為を行わないようにしてもらいます。

強い不安を感じる状況でも時間が経てば自然と平気になることを体験してもらうためです。

例)泥で手が汚れても、手を洗わずにしばらく我慢して過ごす。

このように、不安を感じる状況にあえて身を置くことで、「強迫行為を行わなくても大丈夫」「強迫観念はそこまで不安なものではない」と再認識してもらいます。

認知行動療法の技法2:「不安階層表」

強迫性障害の治療における「不安階層表」とは、先ほど解説した暴露反応妨害法を行う時に使うツールです。

不安階層表は、不安や恐怖を感じる刺激や場面を具体的にたくさん挙げていき、それらを主に10段階で評価して、不安が比較的弱いものから強いものまでを段階的に並べます。

強度を0~100点と数値化することで、より配列しやすくなりますよ。

例えば、最大に強い不安を感じる場面が100点だと設定したら、次は90点程度の多少不安が小さい場面を挙げてみます。

こうして不安が大きいものから小さいものへ順に並べていけば、不安階層表の完成です。

表が完成したら、不安の小さい場面から順に暴露と反応妨害を繰り返し、段階的に不安な場面を克服していきます。

曝露妨害法も不安階層表も、どちらも専門的な知識と技術を必要とするため、専門の医師や心理療法士の指導のもとで取り組みましょう。

強迫性障害における認知行動療法のやり方4ステップ

強迫性障害に対し認知行動療法を行うまでの基本の流れを以下4ステップで解説します。

ステップ1.セルフモニタリング
ステップ2.心理教育
ステップ3.治療計画作成
ステップ4.治療開始

ステップ1:セルフモニタリング

治療を本格的に始める前に、「何に対して強い不安を感じているのか」「どんな時に強迫行動が出ているのか」を、事細かに自己観察しましょう。

この時点で、不安な項目をしっかりリスト化し、不安の強さに数値を付けておくと、この先の流れがスムーズです。

ステップ2:心理教育

認知行動療法を始める前には、強迫性障害についての理解を深めたり、曝露反応妨害法や不安階層表などの治療法ついて、専門家から説明を受けた方がよいでしょう。

あいまいな理解のまま治療が始まると、治療効果が薄くなってしまう可能性があるので、心理教育は大事なステップです。

ステップ3:治療計画作成

次は、専門家と一緒にどのような順番で治療を進めていくか検討します。

不安階層表を作ってその順番通りに進めていく方法が基本です。

ただ、既に日常に支障が出て困っている出来事から、克服を目指すケースもありますよ。

ステップ4:治療開始

計画が立ったら、いよいよ本格的な認知行動療法がスタートします。

不安な状況にあえて立ち向かい、強迫行動をしないよう耐えながら、治療を進めていきましょう。

強迫性障害の認知行動療法は自分でできる?

ここからは、強迫性障害を治すために自分1人で認知行動療法ができるのかどうか、解説します。

1人では難しい認知行動療法

認知行動療法は、自分が今まで気づかなかった思考の癖や思い込みに気づき、別の考え方を上書きしていく作業です。

冷静かつ客観的に自分を分析する余裕があれば、自分でも不安階層表を作れるかもしれません。

ただ、人は病気でなくても誰もが主観で生きていますよね。

強迫性障害など精神的な問題を抱えていれば、より主観は歪みやすく、冷静に分析することは難しいでしょう。

自分でできる認知行動療法の1例【記録思考法】

どうしても自分でチャレンジしてみたいとなれば、【思考記録法】がおすすめですよ。

思考記録法とは、自分が強い不安を感じたとき、そのきっかけとなった出来事や感情について以下の7つの項目に分けて書き出して、客観的に分析してみる方法です。 ノートとペンさえあれば、手軽に誰でもできます。

① 起きた出来事
② その時の感情
③ 浮かんだネガティブな思考
④ その思考の根拠
⑤ その思考に対する反証 (反対する考え)
⑥ 客観的に見た場合の別の考え
⑦ ⑥まで書き出した後の感情の変化

思考記録法は、①②③④で自分がどんなことに不安や恐怖を感じ、それに対しどんな考えを持っているかを明らかにできます。

ただ、自分で別の考え方を探す⑤⑥⑦については、1人で進めるのが難しいと感じる方が非常に多く、専門家の力は必要だといえるでしょう。

強迫性障害における認知行動療法の取り組みやすさ

近年は、自分で気軽に認知行動療法試せるアプリが広がりを見せています。

例えば、次のような機能がついています。

・毎日の心身の状態や感情の記録
・AIによるストレスレベルや不安レベルの測定
・長期間に渡る心身の状態変化の分析
・専門家監修の認知行動療法プログラム
・マインドフルネス瞑想

自分の状態が数値などでデータ化されると、自分でも気づけなかった体調や感情の傾向に気づけるようになります。

また、専門家監修の認知行動療法プログラムがあれば、客観的な目線で自分を分析できるため、不安階層表を作るときのヒントが得られるかもしれません。

上手に活用したいですね。

強迫性障害は専門家と共に認知行動療法で克服しよう

強迫性障害は、かつては治療が難しいとされていた時代もありました。

しかし、現在では認知行動療法のおかげで多くの方が完治もしくは日常生活に問題がない程度に症状を落ち着かせることができていますよ。

ただし、繰り返しになりますが認知行動療法は自己流でやるよりも、専門家のサポートを受けながら取り組むことが非常に重要です。

専門家のサポートを受けながら認知行動療法を行うためには、医療機関の受診、または専門家監修の認知行動療法アプリを活用してみましょう。

例えば、マインドバディなどは、認知行動療法のカウンセリングサブスクサービスを受けられるアプリです。

自分にあった認知行動療法のプログラムを、オンラインでカウンセラーに相談しながら受けれます。

より身近で専門家のサポートを受けられるアプリがあれば、1人では難しい認知行動療法も、きっと最後までやり遂げることができるでしょう。

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