認知行動療法は、心理的な問題や精神的な不調を改善するための心理療法の一つです。
うつ病やパニック障害などの治療に効果があることが認められ、近年では保険適用も可能になりました。
この記事では、認知行動療法が保険適用になる条件や注意点について詳しく解説します。
認知行動療法とは
まずは、認知行動療法の基本や効果、治療の流れなどについて押さえておきましょう。
認知行動療法の基本的な知識
認知行動療法とは、ストレスによる問題を「認知」と「行動」の側面から自分自身で改善していくための考え方や方法のことです[1]。
この療法では、以下の3つの要素が重要なので覚えておきましょう。
行動:実際に自分が行動したこと
感情:気分や感情の状態
認知行動療法では、まずネガティブな考え方やストレスを感じやすい行動パターンを特定します。それらを健康的なものに置き換えていくことで、心の健康を取り戻すのが目標です。
認知行動療法の治療は、精神科医や専門的なトレーニングを積んだ公認心理師などによって行われます。30分以上のセッションを16〜20回実施するプログラムが一般的です[2]。
認知行動療法の効果
認知行動療法は、さまざまな心理的問題や精神疾患に対して効果があることが科学的に証明されています[3]。
主な効果は以下の通りです。
・ストレス管理能力の向上
・問題解決スキルの向上
うつ病やパニック障害においては、認知行動療法で症状が改善した患者さんは、薬物療法での治療に比べて再発が少ないことが分かっています[3]。
ただし、効果には個人差があるので注意しましょう。
認知行動療法に向いている人・向かない人
認知行動療法はストレス問題に苦しむ人に効果的な心理療法です。とくに、次のような特徴を持つ人に向いているといわれています。
・治療への意欲がある
・課題に対して根気強く取り組める
一方、以下のようなケースでは認知行動療法が向かない場合があります。
・自分に厳しすぎる
・自分の感情を言語化するのが苦手である
ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、それぞれの状況によって適応性は異なります。専門家との相談を通じて、自分の症状にあった治療法を選択しましょう。
認知行動療法における治療の流れ
認知行動療法の治療は、通常以下のような流れで進められます[2]。
- 症状の理解:心理的な問題について理解する
- 心理教育:認知行動療法についてレクチャーを受ける
- 治療目標の作成:目標を設定しスケジュールを立てる
- 認知行動療法の実践:考えの切り替え方について学ぶ
- 問題解決スキルのトレーニング:コミュニケーションスキルを身につける
- 自分の考えと向き合う:自身の背景や認知と向き合う
- 振り返り:セッションの振り返り
認知行動療法は、1回30分以上、週1回程度のセッションを数ヶ月から半年ほど続けます。
特徴的なのは、日常生活での実践を促すためのホームワーク(宿題)があることです。
認知行動療法が保険適用になる条件は?
では、認知行動療法が保険適用になる条件とはどのようなものでしょうか。
認知行動療法が保険適用になる場合とならない場合について、詳しくみていきましょう。
認知行動療法が保険適用になる条件と疾患
認知行動療法が保険適用になる主な条件は以下の通りです[4]。
・入院中ではないこと
・認知行動療法に習熟した医師が計画や説明を行うこと
・診療に要する時間が30分を超えること
・一連の治療において16回のセッションを限りとすること
・医師と看護師が共同で行う場合も適用される
保険適用になる疾患には次のようなものがあります[6]。
・強迫性障害
・社交不安障害
・パニック障害
・心的外傷後ストレス障害
・神経性過食症
ただし、具体的な適用範囲や条件は医療機関によって異なるケースがあるため、事前に必ず確認しましょう。
認知行動療法が保険適用外となる条件と疾患
一方で、認知行動療法が保険適用外となる条件もあります。主な条件は以下の通りです。
・保険医療機関として届出がされていない医療機関や施設で治療を受ける場合
・自己啓発や能力開発を目的とする場合
また、次のようなケースは保険適用外となる場合が多いので注意してください。
・軽度のストレス関連症状(診断を受けていない場合)
・性格の偏り(精神的な疾患ではないもの)
・一般的な対人関係の悩み
・仕事や学業のパフォーマンス向上を目的とする場合
これらの場合、認知行動療法は保険適用外となる可能性が高くなります。
自身が保険適用のケースに当てはまるか不安な場合は、医療機関に直接問い合わせて確認しましょう。
保険適用された認知行動療法の料金
認知行動療法が保険適用された場合の料金は、一般的な精神科診療と同様の計算方法で決まります。
料金の主な内訳は次の通りです。
・再診料
・認知行動療法セッション料
・その他の診療に関連する費用
具体的な自己負担額は、医療機関や治療内容によって異なりますが、1回のセッションあたり数千円程度となるのが一般的です。
ただし、年齢や所得に応じて自己負担割合が変わることがあるため、実際の費用は個人によって異なります。
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認知行動療法を保険適用で受けられる場所は?
では、認知行動療法を保険適用で受けられる保険医療機関には、どのような場所があるのでしょうか。
それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。
総合病院の心療内科・精神科
厚生労働省に保険医療機関として届出をしている総合病院の心療内科や精神科では、認知行動療法を保険適用で受けられます。
総合病院の大きな特徴は、重症度の高い症状にも対応できる点です。複数の診療科と連携を取りながら総合的に治療が行われます。
ただし、総合病院は予約が取りにくかったり、待ち時間が長くなったりするのがデメリットです。また、大規模な医療機関が多いため、個別の事情に柔軟に対応しにくい場合も。
じっくりと話を聞いてもらいながらセッションを進めたい人にとっては、少し物足りなく感じる場合もあるかもしれません。
メンタルクリニック
メンタルクリニックも、認知行動療法を保険適用で受けられる場所の一つです。
認知行動療法を提供する機関として厚生労働省に届出していれば、精神科を標ぼうしていないクリニックでも保険適用で受けられる場合があります[4]。
メンタルクリニックは通院のしやすさや治療の継続性という点がメリットです。総合病院に比べて比較的予約が取りやすく、個別の事情にも対応しやすいでしょう。
ただし、重症度の高い症状や緊急時の対応には限界がある場合も。
まずはメンタルクリニックを受診し、心理的な問題が大きい場合は総合病院を紹介してもらうことも可能です。
認知行動療法を保険適用で受ける際の注意点3つ
では、認知行動療法を保険適用で受ける際の注意点を3つご紹介します。
・認知行動療法が受けられる医療機関の情報を収集する
・認知行動療法の治療期間や通院頻度について知っておく
注意点①:自分の症状が条件に当てはまるか確認する
まずは、自分の症状が保険適用の対象となるかどうか条件を確認しましょう。
先ほど紹介したように、以下の疾患に当てはまれば保険適用された認知行動療法を受けられます[6]。
・強迫性障害
・社交不安障害
・パニック障害
・心的外傷後ストレス障害
・神経性過食症
これらの疾患と診断されている場合は、保険適用で認知行動療法を受けられる可能性は高いです。
診断は医師の診察が必要となるため、気分の不調を感じた場合はまず受診することをおすすめします。
注意点②:認知行動療法が受けられる医療機関の情報を収集する
次に、認知行動療法が受けられる医療機関の情報を収集することが重要です。
保険適用で認知行動療法を受けるためには、厚生労働省に届出をした保険医療機関で治療を受ける必要があります。
これらの情報は、厚生労働省のウェブサイトや医療機関への問い合わせなどで集めることが可能です[5]。
医療機関を選ぶ際は、認知行動療法の治療実績やスタッフの経歴などもチェックすることをおすすめします。
また、治療を継続するためには通いやすさも大切なポイントです。自宅からの距離やアクセス、診療時間も確認しておくと良いでしょう。
注意点③:認知行動療法の治療期間や通院頻度について知っておく
最後に、認知行動療法の治療期間や通院頻度について事前に知っておくことが重要です。
自分のスケジュールや体調を考慮して、通院を続けることが可能かどうか判断しましょう。
ただし、認知行動療法のセッションは、症状の程度や個人の状況によって変動する可能性があります。また、ホームワークなどの進み具合によっては、治療期間が延長することも。
治療を始める前に、予想される治療期間や通院頻度について医療機関に確認しておくことで、仕事や生活との両立がしやすくなります。
認知行動療法を保険適用で受けるために条件を確認しよう
認知や行動パターンを変容させることで、ネガティブな症状の改善を目指す認知行動療法。認知行動療法を保険適用で受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
しかし、認知行動療法は考え方をマスターすれば、セルフで実施することも可能です。
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参考文献
[1] 「認知行動療法入門Ⅰ」伊藤絵美.医学書院.(2011)
[2] 「うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル」厚生労働省
[3] 「認知行動療法」e-ヘルスネット.厚生労働省
[4] 第8部 精神科専門療法 通則
[5] 認知療法・認知行動療法の届出医療機関一覧
[6] 大阪府「「精神疾患の医療体制構築に係る現状把握のための指標例」における診療報酬に関する指標」