近年、うつ病をはじめとするさまざまな心の病に活用されている認知行動療法。医学的な研究によって、効果のある心理療法として立証されています。
認知行動療法は専門機関で医師やカウンセラーと行うのが一般的ですが、自分一人でも実践できる方法です。
今回は、自分でも簡単にできる認知行動療法の方法と注意点についてご紹介しますね。
認知行動療法とは?自分でやるための基礎知識
認知行動療法を自分でやるために、まずは特徴やメリット・デメリットなどの基礎知識を身につけていきましょう。
認知行動療法の特徴
認知行動療法とは、何か困った問題に直面したときに、「認知」と「行動」の両面から改善するための考え方と方法をさします。
「認知」とは、物事の受け取り方や見え方です。なかでも、出来事に対して瞬間的に頭に浮かぶ考え方やイメージを「自動思考」と呼びます。
認知行動療法は、自動思考に働きかけることで行動の改善を図り、心を軽くする方法です。自分でやる、専門機関で治療するに関わらず、自分自身が主体的に取り組む方法だと覚えておきましょう。
認知行動療法を自分でやるメリット・デメリット
セルフで実践する認知行動療法は、自分のペースで無理なく取り組めるため、仕事や家事のスキマ時間に取り入れやすいメリットも。また、専門機関に通う必要がないので費用を抑えられるのもメリットの一つです。
さらに、自分の思考パターンと向き合うプロセスで、自己理解が深まりやすくなります。
一方、最大のデメリットは、専門家のサポートが受けられないことです。方法が間違っていても自分では気づきにくく、十分な効果があらわれない場合もあります。
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自分でやる認知行動療法に向いている人・向かない人
では、自分でやる認知行動療法には、どのような人が向いているのでしょうか。向かない人とあわせて詳しく説明します。
自分でやる認知行動療法に向いている人
自分でやる認知行動療法に向いている人には、以下のような特徴があります。
1.自分の思考や行動パターンを客観的に観察できる
認知行動療法では、自分の考え方のクセや感じている不安に気づくことが大切です。とくにセルフでの実践では、自分を客観的に観察できる人に向いています。
2.粘り強く取り組むことができる
認知行動療法は効果が出るまでに時間がかかるため、途中で挫折してしまう可能性も。根気強く取り組む姿勢が求められます。
3.新しいことを学ぶ意欲がある
自分でする認知行動療法に影響する姿勢の一つが、学ぶ意欲です。新しい知識を楽しみながら学べる人は、無理なく継続しながらスキルを習得できます。
自分でやる認知行動療法に向かない人
自分でやる認知行動療法に向かない人の特徴として、次のような特徴があげられます。
1.自分の感情や思考を言語化するのが苦手
自分の考え方や感情を言葉にするのが苦手な人は、認知行動療法のワークが難しく感じるかもしれません。自分の内面と向き合うことに抵抗がある場合も、セルフで実践しにくい原因の一つです。
2.自分に厳しすぎる傾向がある
自分に厳しすぎる傾向がある場合、認知行動療法のプロセスで気持ちがつらくなってしまうことも考えられます。
3.心理的な問題が重篤である
うつ病や不安障害など、重篤な心理の問題がある人はセルフでの実践を避けましょう。症状が悪化してしまうリスクがあります。
認知行動療法を自分でやる4つのステップ
では、認知行動療法を自分でやるための方法についてご紹介します。次のような4つのステップがあります。
2.考え方のクセを見つける
3.考え方を置き換える
4.新しい行動を実践する
ステップ1:自動思考を観察する
まずは、自分の「自動思考」を観察しましょう。
先ほど説明したように、自動思考とは「ある出来事が起こったときに、瞬間的に頭に浮かぶ考え方」です。ネガティブな考え方だけでなく、ポジティブな思考も含まれます。
また、言葉として浮かぶものだけでなく、映像などのイメージも自動思考です。
たとえば、上司に叱られたあとに「私は失敗ばかりでダメな人間だ」「怒っている上司の顔が浮かんで、もう終わりだと思う」などの考えが頭に浮かんだとします。これらが自動思考です。
実際に出来事が起こったときを思い出しながら、自分がどのような受け止め方をしたのかを書き出してみてください。
ステップ2:考え方のクセを見つける
次に、書き出した自動思考から、自分の考え方のクセを見つけましょう。
たとえば、失敗をしたり怒られたりしたあとに、「ダメな人間だ」「もう全部終わりだ」と思っているとします。自分自身が極端な考えに偏っていることに気づくのではないでしょうか。
このように、自動思考の傾向を書き出すことで、自分の「思考のクセ」を見つけることができるのです。
ステップ3:考え方を置き換える
自動思考のクセが分かったら、考え方を置き換える作業をしてみましょう。
先ほどの例で説明すると、「ダメな人間だ」の思考を「普段はミスも少なく、仕事もよくできている。今回はたまたま失敗しただけだ」などと変換してみるのです。
考え方を置き換えるためには、自分の自動思考を客観的に観察することが大切です。違う視点から考えたり、他の人だったらどのように受け止めるか想像したりしながら、新しい思考を発見してみてください。
ステップ4:新しい行動を実践する
最後に、置き換えた考え方を実践してみましょう。同じような状況が起こったときに、自分の受け止め方を意識的に変える練習です。
最初はなかなか上手にできないかもしれません。焦らなくても大丈夫なので、ゆっくりと確実に実践していきましょう。
思考の置き換えに慣れてくると、物事を現実にそって考えられる自分自身に気づくでしょう。セルフでの実践でも、自由で柔らかい考え方が十分に身につきます。
認知行動療法を自分でやるときの3つの注意点
認知行動療法をセルフで実践するときには、注意しなければならない項目があります。以下に3つの注意点について詳しく説明します。
2.症状が強いときは無理をしない
3.症状が悪化するようなら専門家を受診する
注意点①効果が出るまでには時間がかかることを理解する
まず、認知行動療法の効果が出るまでには時間がかかることを理解しましょう。
認知行動療法に関わらず、一般的な心理療法に「即効性」はありません。認知行動療法は他の心理療法に比べて比較的効果が早いと言われていますが、すぐに出るわけではないことを覚えておく必要があります。
先行研究では、16週間の治療を続けることで十分な効果が期待できるといわれています。また、途中で症状が良くなっても、行動の定着や再発予防のために最後まで続けることが大切です。
注意点②症状が強いときは無理をしない
認知行動療法は思考や感情に一定の負荷をかける方法です。そのため、不安や憂うつ感が強いときは、決して無理をしないようにしましょう。
とくに、セルフで行う認知行動療法は自分自身で学びながら実践するので、専門機関で治療を受けるよりも心身の負担が大きくなります。
自分で始めることに少しでも心配があるようなら、症状が落ち着くのを待って実践するのも一つの方法です。
注意点③症状が悪化するようなら専門家を受診する
認知行動療法をセルフで実践し、不安や憂うつ感が悪化するときは、すぐに中止してください。速やかに、心療内科やカウンセリングルームなど専門機関の受診をおすすめします。
とくにうつ病の場合は、認知行動療法を実践することで「うつ状態」から「躁状態」に転じる可能性が指摘されています。躁状態とは、異常なエネルギーが湧き上がってきて色々なことがしたくなり、大金を浪費してしまったりトラブルを誘発したりしてしまう状態です。
認知行動療法によって、パワーが有り余ってまったく疲れないような症状があらわれている場合は、すぐに専門機関を受診しましょう。
簡単にできる!コラム法でセルフ認知行動療法にチャレンジ
認知行動療法を一人で実践するのはなかなか難しいもの。そこで、簡単に取り組める「コラム法」をご紹介します。
以下のような流れで、出来事と感情を振り返りましょう。
① ストレスを感じた出来事を書き出す。
(例)職場の同僚から「この本読んでみて」と仕事に役立つ本を何冊か渡された。
② そのときの気持ちを一言で書き、強さを%であらわす
(例)いらだち90% 屈辱感80% 悲しい70%
③ 瞬間的に頭に浮かんだ考えを書く
(例)私がこの前ミスをしたから、しっかり勉強しなよって意味?迷惑をかけないでと思っているかもしれない。きっと嫌味のつもりで本を渡したんだ。
④ ③のように考えた根拠(事実)を書き出す
(例)普段は本なんてすすめてこない。いつもはもっと明るく接してくれるのに、すごくぶっきらぼうに本を渡してきた。怒っているようにみえた。
⑤ ③の考えを否定する考え(反証)を書き出す
(例)口調のトーンは低かったけど怒ってはいなかった。ぶっきらぼうだったけど、迷いながら渡しているようにもみえた。
⑥ ④と⑤を振り返り、③とは別の考えを考える
(例)もしかして、ミスをして落ち込んでいる私を心配しているのかもしれない。普段真面目な話はしないから相手も気まずいのかな。勇気を出して本を渡してくれたような気がする。
⑦ ⑥のように考えた後の気持ちを%であらわす
(例)嬉しい60% 納得80% 後悔50%
最後の段階で、もし気分が改善しなくても気にし過ぎないでください。感情のプロセスを言語化できたことに達成感を持ちましょう。今後の改善策に必ず役立ちます。
自分でやる認知行動療法で新しい自分に出会おう
物事の受け止め方や考え方におけるクセを見つけ、改善することで問題解決を目指す認知行動療法。正しい知識を身につければ、自分で簡単に実践できます。
ストレスと上手に付き合える新しい自分に出会うために、自分でできる認知行動療法にチャレンジしてみましょう。
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