【パニック障害の克服】自分でできる認知行動療法3つのやり方と注意点
適応障害

適応障害でみられる発熱症状とは?発熱の原因、対処・治療方法について解説

適応障害
公開日:2025.10.28

現代社会で生活する私たちは、職場や学校、家庭などで日々さまざまなストレスにさらされています。心理社会的なストレスが原因で心身のバランスを崩し、日常生活に支障をきたしてしまう状態を適応障害といいます。適応障害では、気分の落ち込みや不安、不眠、行動面の変化など様々な症状が現れますが、身体症状の一つとして発熱がみられることがあります。

この発熱は一般的に「心因性発熱(Psychogenic Fever: PF)」、あるいは「機能性高体温症(Functional Hyperthermia: FH)」と呼ばれています。

この記事では、心因性発熱のメカニズムと科学的根拠に基づいた治療法について、専門家の知見を交えながら解説します。適応障害に伴う発熱との付き合い方を知り、心身の健康を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。

石飛信

医師

石飛信

国立大学医学部を卒業後、母校の精神科医局に入局。臨床医、研究職を経て、現在は単科精神科病院で勤務。医療ライターとして医療系記事の執筆も行っている。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、子どものこころ専門医、医学博士。

適応障害とは?基本的な症状と特徴

適応障害の定義と診断基準

適応障害は、ストレス要因(過重労働、転職、異動、進学、家庭の問題など)がきっかけとなり、心身や行動面にさまざまな症状が現れる病気です[1]。ストレスの原因が明確で、通常はそのストレスにさらされてから1〜3カ月以内に症状が発症し、日常生活や仕事、学業などに大きな支障をきたします。

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適応障害は、精神疾患の診断基準の一つである「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)」において、ストレス関連障害群の一つとして位置づけられています。その診断基準は、以下の要件を満たすこととされています。

  • 特定のストレス要因への反応である: 仕事の異動、人間関係の変化、病気や災害など、明確なストレス要因が存在する。
  • ストレス要因への不適応的な反応: ストレス要因に曝露されてから3か月以内に、症状が出現すること。また、その症状が、一般的なストレス反応の範囲を超えて、日常生活や社会生活に著しい支障をきたしている。
  • 持続期間: ストレス要因が解消されると、通常6か月以内に症状が軽快する。
  • 他の精神疾患(うつ病など)では説明できない。

この診断基準からもわかるように、適応障害はストレス要因との関連性が非常に強いことが特徴です。ストレスの原因がなくなれば、症状も改善に向かう可能性が高いとされています。

適応障害の主な症状

適応障害の症状は多岐にわたり、症状の現れ方はその人の考え方や置かれた環境、ストレスの大きさによって異なります。

おおまかに、以下の3つのカテゴリーに分けられます。身体症状として、持続的な発熱がみられるケースもあります。

身体症状

  • 眠れない、もしくは寝過ぎてしまう
  • 食欲がおちる、または逆に過食気味になる
  • 胸がドキドキする
  • 吐き気やめまいがする
  • 体がふるえる
  • 頭痛
  • 発熱 など

精神症状

  • 気分が落ち込む
  • 不安で落ち着かない
  • 神経質になる
  • 焦ってばかりになる
  • 意欲・興味が低下する
  • 思考力・集中力が低下する など

行動面の症状

  • お酒やタバコの量が増える
  • 涙もろくなる
  • 浪費が増える
  • 周囲とのトラブルが増える
  • 暴飲暴食が止められない
  • ストレスが溜まりモノに当たる など

適応障害で発熱が生じる理由?

心因性発熱とは何か?

心因性発熱(psychogenic fever)は、心理社会的なストレスによって引き起こされる発熱症状を特徴とします[2]。例えば、学校での人間関係の問題や学業不振、家庭内の問題などが発症の引き金となることがあります。

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心因性発熱は、特に思春期の小児や若年成人に見られることが多いと報告されており、「心理的ストレス→中枢神経系・交感神経系の賦活→熱産生増大」という生理メカニズム(自律神経系の過活動)により生じると考えられています。​

ストレスが熱を生むメカニズム

炎症を介さない発熱経路

通常の感染症による発熱は、体内で炎症性サイトカイン(IL-1やIL-6など)が放出され、これらが脳に作用してプロスタグランジンE2(PGE2)という物質を作ることで起こります。

一方、心因性発熱では、炎症性サイトカインを介さない経路が存在することが指摘されています。そのため、炎症を抑えるために使われる一般的な抗炎症薬(解熱剤)は、心因性発熱には効果がないと報告されています。

交感神経の過活動が熱を生む

心理的ストレスが直接脳内の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンやノルアドレナリン神経系を活性化し、体温調節に関わる交感神経活動が亢進して体温が上昇する という機序の存在が報告されています。

つまり、適応障害で発熱が生じる理由は、心理的ストレスが脳を介して体温調節を司る自律神経系(特に交感神経)を過剰に刺激し、熱産生が増強されるためと考えられています。

心因性発熱の臨床的特徴

診察や血液検査で明確な身体的異常が見られず、持続的または反復性の発熱が心理的負荷がある時にみられます。​ストレス反応性の現象であるため、ストレスの除去や心理的介入で解熱することが診断や治療上の特徴です。​また、心因性発熱は、その現れ方にもいくつかの特徴があります。

  • 体温の変動幅: 急性で強い情動ストレスに反応して顕著な高体温(最大41°C)が一過性に生じる場合と、慢性的なストレス状況下で持続的な微熱(37〜38°C程度)が続く場合があります
  • 随伴症状の乏しさ: 感染症罹患時にみられる眠気、だるさ、食欲不振、筋肉痛や関節痛といった随伴症状に乏しいため、体温が上がっているにもかかわらず、周囲からは「重篤感がない」と受け止められることもあります
  • 状況依存性: 特定の授業や活動の際に発熱し、保健室や自宅で安静にすると解熱するなど、ストレス要因と密接に関連して症状が出現するケースが見られます

適応障害で発熱が生じた際の対処法

適応障害によって心因性発熱が生じた場合、その対処法は一般的な感染症による発熱とは大きく異なります。まず、発熱の原因が感染症や他の身体疾患でないことを医療機関でしっかり評価してもらうことが大切です。

そのうえで、ストレス状況や生活環境の確認を行い、職場や学校での環境調整、適切な休息の確保、家族や信頼できる人への相談など、心理的ストレスを減らす工夫が不可欠です。​また、日々のセルフケアとしては規則正しい生活、リラクゼーションや軽い運動、十分な睡眠が推奨されています。

症状が長引いたりストレスの自己対処が難しい場合は、心療内科や精神科での早期受診が望まれます。

心因性発熱は、体の異常ではなく、ストレスに対する体の反応として捉えることが重要です。「心身のSOSサイン」と捉え、一つの方法に頼るのではなく、複数のアプローチを組み合わせることが重要です。

休養と環境調整

最も重要なのは、可能な限り早くストレス要因から離れ、心身を休ませることです。そのためには、環境調整が欠かせません。例えば、配置部署を変えてもらう、いったん休職や休学するなどがあげられます。

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ただ、ストレス要因の種類によっては簡単には離れられないものもあるでしょう。どのように環境調整していくかについては、主治医や家族と相談しながら実現可能な方法を模索していくのがよいでしょう。

ストレスへの対応力を高める

環境調整でストレス要因をうまく取り除けた場合でも、今後再び新たなストレス要因に向き合わなければならないときがあります。また、環境調整だけでストレス要因を軽減することが難しいこともありますので、自身のストレスへの対応力をなるべく高めていき、再び適応障害にならないよう工夫していくことが大切です。

その一つの方法として、認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioral Therapy)があります[3]。CBTでは、医師や臨床心理士とのカウンセリングを通して、自分自身の思考や行動パターンに気づき、少しずつ考え方を変えていきます。CBTにより、ストレス要因に対する考え方や対処法を修正し、ストレス要因への適応力を高めることで、心因性発熱が改善する可能性があります。

当メディアを運営するマインドバディでは、オンラインで認知行動療法を専門としたカウンセリングを提供しています。専門家と一緒にストレス要因への適応力を高めていきたい方や認知行動療法を試してみたい方は詳細を確認してみてください。

薬物療法

適応障害に伴う心因性発熱に対する薬物療法は確立されていませんが、不安や交感神経の過活動を軽減する目的で抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)や一部の抗うつ薬などの薬剤が使われることがあり、有効例の報告もあります。

これらの薬物療法は、不安や緊張の緩和、および自律神経バランスの正常化を通じて体温上昇の抑制に寄与していると考えられます。ただし、薬物療法だけで完治するケースは限られ、必ず心理療法や環境調整と組み合わせて行うべきです。

まとめ

適応障害に伴う心因性発熱は、身体疾患と見分けがつきにくく、本人も周囲も悩みやすい症状です。ストレス状況下で原因不明の発熱が続く場合は、早めに精神科専門医を受診し、環境調整やカウンセリング、必要に応じた薬物療法を検討しましょう。

自分を責めたり「頑張りが足りない」と思い込まず、心身のSOSサインとしての発熱にしっかり向き合うことが、健康回復への第一歩です。

参考文献
[1]適応障害|MSDマニュアル
[2]Psychogenic fever: how psychological stress affects body temperature in the clinical population.Temperature (Austin).2015 Jun 3;2(3):368–378. Temperature (Austin).
[3]認知行動療法(CBT)とは|認知行動療法センター